ウンカの生態とその被害-セジロウンカ・トビイロウンカ・ヒメトビウンカ
ウンカの被害は主にセジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカの3種類によって引き起こされます。それぞれ日本を含む東アジア一帯に広く生息しています。3種のウンカの詳しい特徴と防除方法を見ていきます。
主な3種のウンカによって引き起こされる稲の生育抑制、坪枯れ、イネ縞葉枯病
|セジロウンカ:葉鞘褐変、生育抑制を引き起こす「夏ウンカ」
【セジロウンカ成虫】
[特徴]
セジロウンカは7〜8月に多発生することから「夏ウンカ」と呼ばれています。体の大きさは3〜4mm程度で、背中に白い紋があるのが特徴です。主な餌植物が稲に限られるため、日本では冬を越せません。
[飛来のしかた]
毎年、梅雨時期の6〜7月に中国大陸南部などから下層ジェット気流に乗って日本に長距離飛来します。飛来数は九州などの西日本ほど多い傾向にありますが、年によっては東北あたりまで飛来します。
[被害について]
飛来したセジロウンカは水田で1〜2世代増殖して稲を加害します。多飛来した場合に葉鞘の産卵部位が褐変化して生育抑制が起こったり、多発した場合には排泄物にすす病が発生する被害が出ます。
【セジロウンカ幼虫】
【セジロウンカ産卵痕】
【セジロウンカ産卵痕内側】
[セジロウンカの増殖パターン]
セジロウンカは一般に飛来次世代の7月下旬〜8月中旬に最も密度が高くなります。比較的若い稲を好むため、9月頃には一般に水田から移出してしまい、収穫期には水田ではほとんどみかけなくなります。
【増殖パターン】
|トビイロウンカ:被害が急激に進み、坪枯れに至る「秋ウンカ」
【トビイロウンカ成虫】
[特徴]
トビイロウンカは9〜10月に被害が目立つことから「秋ウンカ」と呼ばれています。体の大きさはセジロウンカより少し大型で、雌が約5mm、雄は約4mmで、雌雄ともに脂ぎった褐色をしています。
[飛来のしかた]
トビイロウンカの主な餌植物は稲に限られ、日本では冬を越せないため、毎年、セジロウンカと同様に長距離飛来します。飛来数は九州で最も多く、東にいくほど少なく、関東以北にはほとんど飛来しません。
[被害について]
トビイロウンカの飛来数はセジロウンカに比べて少なく、稲100株に1匹程度ですが、秋までに2〜3回世代増殖を繰り返して、収穫間際の9〜10月に稲1株で200匹を越えるような密度になると、坪枯れと呼ばれる大きな被害を起こします。
【トビイロウンカ幼虫】
【トビイロウンカによる坪枯れの被害】
【トビイロウンカ吸汁行動】
【トビイロウンカ多発生】
[トビイロウンカの増殖パターン]
セジロウンカに比べてトビイロウンカの飛来量は大変少なく、その密度は稲100株に1匹以下ですが、秋までに3世代増殖しつづけて、収穫直前の秋に坪枯れといわれる大きな被害を引き起こします。
【増殖パターン】
|ヒメトビウンカ:イネ縞葉枯病ウィルスを媒介するやっかいもの
【ヒメトビウンカ成虫】
[特徴]
ヒメトビウンカの体の大きさは3〜4mm程度で、セジロウンカやトビイロウンカと違って、いろいろなイネ科雑草でも生活できるため、日本でも冬を越すことができます。
[飛来のしかた]
トビイロウンカなどのような、海外からの長距離飛来はこれまでみられませんでしたが、最近になって、ヒメトビウンカも海外から大量に飛来する場合があることがわかってきました。
[被害について]
直接的な吸汁害よりも、稲を吸汁するときにイネ縞葉枯病、イネ黒すじ萎縮病などのウイルス病を稲に媒介することで問題になります。これらの病気のウイルスを吸汁によって獲得したヒメトビウンカが1次伝染源になって、さらに病気が広がります。
【ヒメトビウンカ成虫】
【ヒメトビウンカ幼虫】
【ヒメトビウンカによるイネ縞葉枯病】
[ヒメトビウンカの増殖パターン]
日本で越冬可能で、4齢幼虫が畦畔や果樹園の下草などのイネ科雑草で越冬。その後、イネ科雑草や小麦畑で増殖します。麦刈りの時期に小麦畑から移出して、近くの水田に侵入。その後は水田で2〜3世代経過します。
【増殖パターン】