除草効果を最大限に高める除草剤の使い方

病害虫・雑草コラム

IWM(総合的雑草管理)のなかでも大きなウエイトを占める“除草剤の上手な使い方”をご紹介します。「除草剤をまいているのに雑草が抑えられない」という方は、ぜひ参考にしてください。
※IWM=Integrated Weed Managementの略

雑草管理がうまくいかないさまざまな要因


雑草管理の失敗には、さまざまな要因が考えられます。ここでは、除草剤の効果を十分に発揮できない主な要因を挙げてみます。

(1)除草剤の使い方が適切でない

湛水散布すべき除草剤を落水条件で散布したとか、対象雑草に有効な除草剤ではなかったというような失敗です。除草剤のラベルを良く読んで適切に使用するよう心がけましょう。

(2)想定外の状況による残草

除草剤処理時期の強風や豪雨によるオーバーフロー、ネズミなどが掘った穴からの漏水といった想定外の要因。また、農業経営の規模拡大や複合化にともなって、圃場ごとのきめ細かな対応ができないことも原因と考えられます。

【ネズミなどが掘った穴からの漏水】

ネズミなどが掘った穴からの漏水

【豪雨などによるオーバーフロー】

豪雨などによるオーバーフロー

(3)雑草が多すぎる

雑草があまりに多すぎても除草は成功しません。土の中で生きている「埋土種子」が多い圃場では除草してもどんどん雑草が出てくるため、毎年雑草をきちんと防除することが大切。また、見慣れない雑草を発見したらすぐに情報を集め、早めの対策を心がけましょう。

(4)水稲の生育が良くない

除草剤の残効が切れた状態で水稲の生育が悪い状況では、後発雑草が発生し太陽の光を浴びてどんどん大きくなります。適正な雑草の制御を行ない、水稲をたくましく生育させることが大切です。

【移植栽培での雑草の要防除期間と水稲の生育】

移植栽培での雑草の要防除期間と水稲の生育

(5)除草剤が効きにくい雑草もある

スルホニルウレア系除草剤(SU剤)に抵抗性を持った「除草剤抵抗性雑草」や、直播栽培などで問題になる「雑草イネ」、難防除多年生雑草、畦畔などから水田へと侵入する「侵入雑草」、大型の「湿生雑草」といった雑草は、そもそも除草剤が効きにくい草種です。

除草効果を飛躍的に高めるためのヒント


うまく雑草が防除できない場合でも、除草剤の選択の仕方、散布の仕方、そして他の防除法と組み合わせることで防除効果を飛躍的に高めることができます。

抵抗性雑草には、その雑草に「効く成分」を

スルホニルウレア系除草剤(SU剤)は多くの一発剤に含まれている除草剤成分ですが、最近になってSU剤の効かない 「SU抵抗性」バイオタイプと呼ばれる種類がイヌホタルイ、コナギ、アメリカアゼナなどに出現しました。抵抗性バイオタイプが生えている場合は、これらに 効果のある成分を別に含んだ一発処理剤を選択することが重要です。

多年生雑草には「体系処理」で

多くの雑草は除草剤が効いている間に出芽が終わるのですが、難防除多年生雑草と呼ばれるクログワイ、オモダカは除草 剤の効果が無くなったころにも芽を出して生育することができます。これらの雑草防除には、中期剤、後期剤を利用し、複数回の除草剤散布によって長い期間除 草効果を持続させることが大切です。

■図:クログワイとオモダカの発生消長 (1995年、秋田県での調査、5月10日水稲移植)

【クログワイの発生消長】

クログワイの発生消長

【オモダカの発生消長】

オモダカの発生消長

 

畦畔から侵入する雑草には「有効な茎葉処理剤」

大きくなってから水田に入ってくる雑草(キシュウスズメノヒエ、エゾノサヤヌカグサ、アシカキ、イボクサなど)に は、茎葉処理剤の中期剤、後期剤を利用することが必要になります。ただし、畦畔雑草は種類によって有効な除草剤成分が異なるので、雑草の種類を見分け、ラ ベルにその草種名が明記されている除草剤を選択しましょう。

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業総合研究センター 生産体系研究領域

上席研究員 渡邊 寛明/内野 彰