ウンカの最新動向と防除の重要性

病害虫・雑草コラム

稲の害虫であるウンカ。主に海外から飛来し、生成育抑制や、坪枯れ、ウイルス病の媒介などを引き起こします。成虫も幼虫も稲の茎や葉にストロー状の口針を刺して吸汁しますが、稲を枯らしたり、稲にウイルス病をうつしたりするなど、種によって生態は異なります。ウンカの生態や飛来法と、防除法をまとめました。

熱帯地域に生息するウンカと、温帯性のウンカ


ウンカの主な種類は、セジロウンカ(背白ウンカ)、トビイロウンカ(鳶色ウンカ)、ヒメトビウンカ(姫鳶ウンカ)の3種。大きさや形は似ていますが、種によって生息している地域や増殖法などの生態が異なります。

一方、ヒメトビウンカは温帯性のウンカで、稲以外にも小麦やイネ科雑草に生息しています。分布は中国、台湾、韓国など東アジア一帯にかけ、日本でも北海道に至ります。またそれぞれの種に、翅多型(はねたけい)と呼ばれる現象がみられます。水田に飛来してくるウンカはすべて翅を持っている長翅型ですが、密度が低いときや若い稲で育つと、短翅型と呼ばれる翅が短いタイプが出現します。短翅型は飛べない代わりに、発育が早く1匹の雌あたりの産卵数が多いなど、増殖に適したタイプです。これが多く出るとその後の増殖率が高くなります。特にトビイロウンカでは、この短翅型がどのくらいの割合で出るかが、その後の増殖の鍵を握っているといえるでしょう。

【セジロウンカの増殖パターン】

セジロウンカの増殖パターン

【トビイロウンカの増殖パターン】

トビイロウンカの増殖パターン

【ヒメトビウンカの増殖パターン】

ヒメトビウンカの増殖パターン

季節風やジェット気流に乗って移動するウンカ


セジロウンカとトビイロウンカが周年を通じて発生できる北限は、ベトナム北部や中国最南端の海南島の付近です。これらの地域で冬を越したウンカ類は、1月初めに移植される冬春作の稲で、2~3世代が増殖し、冬春作の稲の収穫期にあたる5月頃にベトナム北部などから飛び立ち、季節風に乗って中国南部に移動します。ちょうどその頃、中国南部は、稲の一期作目が生育期に入り、1~2世代がここで増殖します。中国南部の稲が収穫期を迎える6月下旬から7月にかけ飛び立ったウンカは、梅雨前線に沿って発達する下層ジェット気流に乗って、日本に到達するのです。

これに対して、ヒメトビウンカは一般的には長距離移動する性質は見られません。

【ジェット気流で移動するウンカ】

ジェット気流で移動するウンカ

2005年頃から、ベトナムや中国でウンカが大発生しています。これらの国で発生したウンカが日本にも飛来するため、海外でのウンカの多発生も他人ごとではありません。大発生の主な原因は、これらの国で栽培される稲が、多収で美味しい反面ウンカが増殖しやすいハイブリッド米※などの品種に変わったことが指摘されています。

※異種交配により品種改良された、多収かつ食味に優れた品種

【ウンカ類の発生と移動経路】

ウンカ類の発生と移動経路

防除対象のウンカに効果が高い薬剤を選定することがポイント


実際に、2008年6月には九州の西海岸地域や中国地方の日本海側を中心に、ヒメトビウンカが海外飛来して、それがもととなり稲縞葉枯病の多発生が起こりました。これらの飛来源は中国・江蘇省のあたりと推定されています。

飛来したウンカは、稲縞葉枯病ウイルスの保毒虫率が高く、また薬剤抵抗性の特性が日本の土着の虫と違うこともわかってきました。今後も飛来状況に注意すると共に、ヒメトビウンカに対して効果の高い苗箱施用薬剤を選択することが重要です。ヒメトビウンカと稲縞葉枯病については、最近は関東から近畿地方にかけても一部の地域で多発生しており、これから害虫としての重要度がますます高くなっていくでしょう。

害虫を防除するためには天敵を使ったり、抵抗性品種を使ったりする方法がありますが、現時点では農薬を使った防除が最も効率的で経済的です。ただし、この5年ほどでウンカの種によって薬剤に対する抵抗性に違いが出てきています。同じ薬剤を使い続けると、その薬剤に対して抵抗性が発達することがありますので、防除対象のウンカに効果が高い薬剤をしっかり選定することが重要です。育苗箱施用剤の場合は、決められた量できちんと処理するようにしましょう。

ウンカの上手な防除方法


近年、抵抗性ウンカが増加しており、九州・西日本のみならず関東や近畿地方でも一部地域で多発している状況にあります。薬剤が効きにくくなったセジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカにも効果が高い「ビルダーフェルテラチェス粒剤」を活用して品質の高いお米づくりをめざしましょう。

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