翌年以降の雑草発生量を軽減する除草技術『稲刈取後除草』

病害虫・雑草コラム

生産者の高齢化や水田の大規模集積化に伴い、水田雑草の管理には省力化が求められる時代。稲刈取後の圃場に再生した水田雑草を非選択制除草剤プリグロックスLで除草することで、翌年の水田雑草発生量を軽減させるという技術『稲刈取後除草』についてお話しします。

雑草は形を変えながら一年中生きている!?


水田の雑草は、水稲栽培期間だけ生育しているのではなく、形を変えながら一年中生きていることをご存知でしょうか。例えば、水田に10本のヒエが穂を出していたとします。それはおそらく、数百本のヒエが発生して、除草剤などの防除で最終的に10本だけが生き残ったのでしょう。

しかし、私たちの目に見えているヒエはたったの10本ですが、その水田の土の中には数千~数万のヒエの種子があると考えられます。この種子のことを"埋土種子"と言いますが、土の中は見えないので、雑草の侵入初期の段階では、埋土種子が増えていることに気づかないことが多いものです。

その年のことだけを考えず、翌年以降も視野に入れた雑草対策を


残草による水稲の減収程度は、一般的に残草量と密接な関係があります。その程度は水稲の栽培法や雑草の種類によっても異なりますが、タイヌビエでは1㎡あたり1株(乾物重で数十g)以下であれば、水稲収量に及ぼす影響は小さいとされます。したがって、当該年だけを考えれば、それ以下の残草は許容されても良いはずです。

しかし、たとえ水稲収量に影響しない残草でも、残った草が多量の種子を落とし、埋土種子の蓄積によって翌年以降の雑草発生量増加により防除が困難になることを考えると、早めの対策を心がける必要があるのではないでしょうか。

稲刈取後のプリグロックスL100倍液で残草を防除し、翌作への持越し種子量を軽減


そんな水稲農家の皆様に、非選択制除草剤プリグロックスLを利用した『稲刈取後除草』という除草技術をご紹介します。稲刈取後の本田に再生してきたノビエ、スズメノテッポウ、コナギなどの雑草に対して、プリグロックスLの100倍液を散布。雑草が種をつける前に枯らしてしまいます。プリグロックスLは、1日で除草効果が現れ、低温でも除草効果が安定しているので、秋冬期の稲刈取後除草には最適な除草剤です。

【ノビエ】

ノビエ

【スズメノテッポウ】

 

スズメノテッポウ

【コナギ】

 

コナギ

【アゼナ】

 

アゼナ

こうして雑草を枯らしておけば、土壌に落ちる雑草の種子量を減らすことができるので、翌年に水田で発生する雑草の密度が減り、雑草管理が楽になります。
 


稲刈取後除草の事例


ここで、移植水稲21ha、直播水稲15ha、小麦・大豆20haなどを手がける愛知県豊田市の岡田吉司さんが実践する稲刈取後除草のケースをご紹介します。

 

不耕起V溝直播栽培の圃場で、ヒエが多発して問題に

岡田さんは、水稲の不耕起V溝直播栽培の圃場で、年々ヒエが増えてきたことが悩みの種でした。「パートさんに手取り除草してもらっていましたが、3人がかりで1日20aぐらいしかできないから大変だったんです」と岡田さん。

何かいい対策を…と考えていた時に、『稲刈取後除草』を知りました。岡田さんは従来、播種後出芽前と入水4~5日前に非選択性除草剤を1回ずつ、入水4~5日後に初・中期一発処理除草剤を1回、その後、ヒエの多発した箇所をスポット処理という除草体系でした。そこに、稲刈取後除草というひと手間を加え、再生したヒエに対して、プリグロックスLを乗用管理機で散布するようにしたのです。

 

『稲刈取後除草』で、発生量は以前の5分の1に激減

「この前、散布途中でたまたまプリグロックスLのタンクがきれて、30aぐらい未散布の場所が残っちゃったんです。そうしたら翌年、そこだけヒエぼうぼうでひどかった(笑)。 プリグロックスLをまいておいた部分は、ヒエが全然ないから、違いが一目瞭然です」と語る岡田さん。年を追うごとにヒエ発生が確実に減っているそうです。現在では発生量が以前の5分の1ほどになった、とのこと。まさに「急がば回れ」の発想でした。 このように、稲刈取後除草を実践する大型農家の方がいま、増えつつあります。

皆さんも、いつもの初期剤や初・中期一発剤といった水稲除草剤での防除にひと手間を加え、「稲刈取後除草」を実践してみてはいかがでしょうか。特に大規模面積での水田除草省力化に貢献できることと思います。


出典:シンジェンタジャパン(株)「IWMガイドブック」より一部抜粋

関連製品

プリグロックスL