ねぎ病害虫のトレンドとその防除対策

病害虫・雑草コラム

新規就農者確保の施策が活発な鳥取県では、「ねぎ」の作付面積が全国ベスト10に入るほど栽培が盛んで、国の野菜指定産地にもなっています。鳥取県西部総合事務所農林局西部農業改良普及所の伊垢離(いごり)孝明さんに、ねぎの病害虫やその対策についてお聞きしました。

近年、ねぎではどのような病害が問題になっていますか。


問題病害であるさび病、べと病は多発傾向にあります。さび病、べと病は気温15~20℃前後の中温期かつ多湿な条件で発生しやすく、5~6月および10月あたりに多発します。

一方、さび病やべと病とは異なり、冬季などの低温期に発生しやすいのが、全国的に増加傾向にある黒腐菌核病。甚発生すると収穫が皆無になる恐れのある土壌病害です。鳥取でも目立ち始めた病害で、砂地の畑では強風の影響で飛砂とともに菌核が広がりやすく 、12月から4月どりのねぎでは注意が必要です。黒腐菌核病や萎凋病といった土壌病害は、生育期に散布できる薬剤がほとんどないため、その対策も課題の一つです。

【ネギさび病】

ネギさび病

【ネギべと病】

ネギさび病

ねぎの害虫では、どのような害虫が問題になりますか。


やはりネギアザミウマ、ネギハモグリバエ、シロイチモジヨトウといった害虫ですね。ネギアザミウマは、雌成虫は体長1.1~1.6mm程度で、体色は長日高温期は黄色~黄褐色、短日低温時は黒褐色で、4~11月に発生しはじめ、6~7月と10月がピークです。

【ネギアザミウマ ネギ被害】

ネギさび病

ネギハモグリバエは、雌成虫の体長は2mm程度で、体色は黒く、所々に淡黄色の斑があり、5~10月に発生し、6月がピークになります。

【ネギハモグリバエ 被害】

ネギさび病

【シロイチモジヨトウ 被害】

シロイチモジヨトウ 被害

また近年の害虫として、連作圃場で多発する傾向があるロビンネダニや、ネダニモドキといったネダニ類が問題化してきました。どちらも現状では登録薬剤がない害虫です。

最近問題化してきた新しい病害虫について教えてください。


鳥取ではここ10年の間に、ネギアザミウマが媒介するアイリス・イエロー・スポット・ウイルス(IYSV)が目立つようになりました。青葉の部分がまだら状態になる病気なので、青葉を出荷するねぎでは要注意です。

また、年間平均気温の低い地域で問題化してきたのが、葉枯病。葉身の黄色斑紋症状が特徴で、軟腐病や腐敗病にもつながりやすい新しい病害です。

重要病害 さび病、べと病防除のポイントを教えてください。


さび病は、25度以下で湿度が高いと発病しやすく、次々と拡がるので早期発見が大切で、葉の上にさび色の斑点を見つけたら防除タイミング。初発もしくは発生後に、効果の高い薬剤を使用するのが重要で、春ねぎ、秋冬ねぎの収穫期を通じて発生しやすいことから、収穫前使用可能日数の短い剤が使いやすいと思います。

一方、べと病は、発病後の薬剤散布では効果が低いため、予防効果の高い剤で予め防除するようにしましょう。その際、大切になるのが抵抗性回避のために、異なる系統の薬剤によるローテーション防除を心がけるということ。

私どもが新規就農者向けに配布している秋冬ねぎの防除暦では、合計10回程度の防除のうち、殺菌剤・殺虫剤ともに7系統ほどの薬剤の中からローテーションできるように指針を示しています。

ねぎの生産現場では、どのような課題がありますか。


いまねぎの現場では、いちばんの主要病害ともいえるさび病、べと病等に対して効果のある、粒剤の登場が望まれています。さび病、べと病は、発生時期が長期にわたるため、一般的に粒剤より残効が短い散布剤では対応しにくいのが現状です。特に秋冬ねぎでは、真夏に動噴などを使って複数回行う散布作業は重労働。高齢の生産者のご苦労は想像に難くありません。粒剤は、有効成分を根から吸収して植物体に浸透移行性するので残効が長く、散布剤の防除回数を減らすことができます。

こうした効果的な粒剤が普及されれば、離農する高齢者に歯止めをかけたり、面積拡大にも貢献するのではないでしょうか。それは鳥取に限らず全国にもいえることだと思います。

伊垢離(いごり)孝明さん

伊垢離(いごり)孝明さん