病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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ばれいしょの重要害虫と「植溝内土壌散布」による防除


  • 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
十勝農業試験場生産環境グループ
主査 三宅規文さん

    地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
    十勝農業試験場生産環境グループ
    主査 三宅規文さん

北海道のばれいしょ作付面積のうち約4割を占める十勝地区。
その面積は21,800haにも及び、ばれいしょのほか、麦類、豆類、てんさいの4作物を輪作体系で栽培していらっしゃいます。
そんなばれいしょの産地において、病害虫防除は収量や品質を左右する重要なテーマ。
今回は、ばれいしょの害虫の被害やその防除対策について、地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 十勝農業試験場 生産環境グループ主査三宅規文さんにお話を伺いました。


ばれいしょの品質向上のために取り組まれていることはありますか。

十勝管内は採種圃場の面積が全国一で、「関係者が一丸となって」高品質で健全な種子ばれいしょづくりに注力しています。
病害虫防除などで非常に厳しい管理が求められることから、一般圃場との混在を避けて、原原種、原種、採種といった各圃場を集積した団地化が以前から進められています。
また、採種圃場のまわりにエン麦を植えて、そこに天敵を定着させ害虫を防除する「開放系飼育システム」という生物的防除を導入し、外部から飛び込んでくるジャガイモヒゲナガアブラムシやワタアブラムシなどのばれいしょの害虫密度を抑えるなど、健全な種子ばれいしょ生産のための取り組みを実施しています。

ばれいしょでは、どのような害虫が問題になりますか。

シストセンチュウ以外では、アブラムシ類やナストビハムシが重要害虫ですね。
特に、葉巻病やYモザイク病といったウイルス病を媒介するアブラムシ類は、ばれいしょの減収や品質低下を招き、収益に直結するので防除は必須です。
アブラムシ類はわずかな発生量でも、隣の株や周囲の圃場などに次々とウイルス感染を引き起こします。
例えば25℃の環境下の場合、1匹の成虫が2週間程度で100倍ほどに増殖し、さらにそれが同じ倍率で増殖を繰り返すと言われています。
アブラムシ類は非常に増殖力が高いので、密度が低いうちに防除しておくようにしましょう。

ばれいしょのアブラムシ類に見られる近年の傾向はありますか。

ばれいしょで問題になるのは、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシといったアブラムシ。
近年はワタアブラムシの発生時期が早期化傾向にあり、7月ぐらいから発生が見られる年も散見されます。
また、ジャガイモヒゲナガアブラムシは、一番最初に発生して最後までダラダラと発生しているのが特徴です。
アブラムシ類は越冬量、天敵の発生量、気象条件などによって発生密度が増減しますが、降水量が少なく、乾燥状態で気温が高いと発生密度が高まるようです。

  • ジャガイモヒゲナガアブラムシ

    ジャガイモヒゲナガアブラムシ

  • モモアカアブラムシ

    モモアカアブラムシ

  • ワタアブラムシ

    ワタアブラムシ

ナストビハムシについてはいかがでしょうか。

ナストビハムシは年1回の発生で、防風林などの枯葉の下や雑草の根際の地中で越冬。
5月のばれいしょ萌芽とともに圃場に侵入し、6月が発生最盛期です。
塊茎の中に幼虫が食入した際の穴がポテトチップスの黒い焦げにつながるので、主に加工用ばれいしょの圃場では防除が重要になります。

アブラムシ類やナストビハムシの防除のポイントについて教えてください。

ナストビハムシは、5月下旬のばれいしょ萌芽とともに、越冬していた成虫が圃場に侵入します。
また、先ほどお話したようにアブラムシ類は、ウイルス感染した個体が次々と周囲の株に感染を引き起こし、短期間であっという間に増殖してしまうので、発生初期の防除が大切です。
アブラムシ類の中でもいちばん発生時期が早いジャガイモヒゲナガアブラムシでは、6月ごろから発生が始まるので注意して圃場を観察するようにしましょう。
多発してしまってからでは薬剤での防除効果が低下するので、発生密度が低い初期のうちに防除するように心がけてください。
そのため種子ばれいしょ圃場では、ウイルスの感染を未然に防ぐために、植え付けから収穫までの間に徹底して防除を行っています。

現在取り組まれている植構内土壌散布(インファロー)の試験についてお聞かせください。

アブラムシ類とナストビハムシの初期防除を目的に、以前から植付時に使われていた粒剤の代替剤として、昨年から、植構内土壌散布機によるアクタラ顆粒水溶剤の散布試験を行っています。
まだ試験が始まったばかりなので検証はこれからですが、アクタラ顆粒水溶剤を土壌に直接処理することで長期残効が期待できると聞いています。
もし50日程度残効が持続すれば、植え付け以降に散布する茎葉処理殺虫剤のうち最初の1~2回が省略できたり、アブラムシ類とナストビハムシの同時防除による薬剤数の低減につながるのではないかと期待しているところです。

  • 植構内土壌散布のしくみ

    植構内土壌散布のしくみ

今後は病害虫防除に対して、どのような取り組みをされる予定ですか。

  • 写真左より、三宅規文さん、弊社技術普及部 小梨伸隆

    写真左より、三宅規文さん、
    弊社技術普及部 小梨伸隆

当試験場では、ばれいしょの病害虫防除対策として、生産者の皆さまにより有益な情報をご提供できるように、様々な研究・試験を日々実施しています。
インファロー技術もその一つで、今後、ばれいしょ以外の作物にも登録が広がってくれれば、もっと普及が進むと思います。ばれいしょ、麦類、豆類、てんさいの4輪作体系を維持していくためにも、生産者の皆さまが継続してばれいしょを栽培していけるような技術のサポートを確立していきたいですね。


 

2020年4月掲載

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