様々なホコリダニ(埃ダニ)-種類と生態について-

病害虫・雑草コラム

ホコリダニは非常に小さく肉眼で見つけることは困難で、作物に異常が見られてからその発生に気付くことが多い害虫です。ホコリダニの被害の特徴と防除対策をご紹介します。

作物を加害するホコリダニの種類


ホコリダニ科のダニはその名前(埃ダニ)が示すように、体長が0.2mm位の小さな体をしています(写真1)。そのため、作物上のホコリダニを肉眼で見つけることは困難で、作物に異常が見られてからその発生に気付くことが多い害虫です。

【写真1:チャノホコリダニメスの幼虫】

チャノホコリダニメスの幼虫

これまで、農作物を加害するホコリダニとしては、チャノホコリダニ、シクラメンホコリダニ、スジブトホコリダニ、アシボソホコリダニなどが報告されていますが、チャノホコリダニとシクラメンホコリダニは各種の作物を加害するホコリダニとして知られており、世界中で問題となっている害虫です。

ホコリダニの発育過程


ホコリダニは卵→幼虫→休止期幼虫→成虫と発育し、メスの休止期幼虫はオス成虫によって運ばれていることが観察されます。卵から成虫までの発育日数は温度が高くなるにつれて短くなり、25℃では5~7日間で、短期間に増える害虫です。産卵は1日あたり1~5個で、1~2週間にわたり産卵し、合計では、15~30個の卵を産むとされています。寄生する植物が多く、この仲間には、食菌性でキノコを加害するものやキクイムシ、ハダニ類の卵を食べる種もあります。

シクラメンホコリダニの加害作物と被害


シクラメンやセントポーリアなどの花卉類、イチゴ、ピーマンなどの野菜類に寄生・加害することから海外ではcyclamen miteまたは strawberry miteとも呼ばれています(写真2)。

【写真2:シクラメンホコリダニの雄、卵、雌、静止期幼虫】

シクラメンホコリダニの雄、卵、雌、静止期幼虫

シクラメンでの被害は未展開の葉や芽の中などの暗く、湿度が高い場所で多く繁殖し、そのため花弁の奇形、部分的な変色、芽や葉の変形が起こり、寄生密度が高い場合には株が枯死することもあります。イチゴでは新芽が壊死し、それが進むと株全体が枯死することが知られています。

チャノホコリダニの加害作物と被害


野菜類では、なす(写真3)、トマト、きゅうり(写真4)、メロン(写真5)、すいか、いちごなど、畑作物ではいんげん、だいず、落花生など、花卉ではシクラメン、ガーベラ(写真6)、きく、ケイトウ、ベゴニアなど、果樹では柑橘類(写真7)、なし(写真8)、もも、いちじく、クリ、など、それに茶に寄生加害し、きわめて多くの植物を寄生加害します。

【写真3:ナス新芽の被害】

ナス新芽の被害

【写真4:きゅうり果実の被害】

きゅうり果実の被害

【写真5:メロンの新芽と果実の被害】

メロンの新芽と果実の被害

【写真6:ガーベラ花の被害】

ガーベラ花の被害

【写真7:みかん新芽の被害】

みかん新芽の被害

【写真8:ナシ新芽の被害】

ナシ新芽の被害

20℃での卵から成虫までの所要日数は13~17日。発育適温は10~20℃とされ他の害虫に比べ低い温度でも活動することが特徴です。 被害はなす、ピーマンなどでは葉が萎縮したり、奇形となり、花や実が加害されると奇形とともに、サメ肌状の果実(写真9)となります。果樹類では新芽や幼果が加害されますが、新芽では萎縮した奇形葉(写真10)となり、果実では光沢のない灰色のサメ肌状の果実(写真11)となります。

【写真9:ナス果実の被害(サメ肌状)】

ナス果実の被害(サメ肌状)

【写真10:みかん新芽の被害】

みかん新芽の被害

【写真11:果実の被害(レモン)】

果実の被害(レモン)

スジブトホコリダニの加害作物と被害


施設栽培のうり類やすいか、かぼちゃ、トマト、なすなどの野菜類や果菜類などで主に発生し、いんげんやだいず、稲、ぶどうなどでの発生も報告されています(写真12)。育苗期から生育初期での発生密度は高く、葉が展開して硬くなるにつれて減ってきます。 ナスの灰色かび病などの病斑発生部位での発生量が多いことが知られており、菌類も食べているようです。施設内では育苗中や幼苗期によく稲わらを敷きますが、これらの稲わらで増えた個体が発生源となっていることが知られています。

【写真12:筋ふとホコリダニの雌成虫と卵】

筋ふとホコリダニの雌成虫と卵

ホコリダニの防除対策


ホコリダニ類は成長した組織の固くなった場所では加害できないので、その加害する(寄生している)場所は柔らかい新芽や幼果の時期に限られています。この害虫は全園でいっせいに発生することはないので、園を良く見回り、新芽などの柔らかい部分に異常が見られたら、ホコリダニが寄生しているかどうかを確認し、周囲に広がらないうちに防除を実施することが大切です。

また、収穫の終わったなすやいちごなどの残渣を果樹園に敷きこんだためにその残渣に寄生していたホコリダニが果樹の果実を加害して被害が問題となることがよくあります。そのような残渣は土中に埋め込むか、焼却するようにして下さい。

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シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問

古橋 嘉一