ミカンハモグリガの生態と防除方法

病害虫・雑草コラム

ミカンハモグリガ(英名:Citrus leaf miner)はかんきつ類だけに寄生し、日本を含む世界中で分布する害虫です。食害による被害だけではなく、かいよう病の原因にもなります。ミカンハモグリガの発生経過と生態を詳しく解説します。

世界中に広く分布するミカンハモグリガ


ミカンハモグリガは「エカキムシ」や「ジカキムシ」とも呼ばれています。葉に絵を書いたような被害がでることからこの名前があるようです。かんきつ類だけに寄生し、他の植物に寄生することはありません。日本の他、東南アジア、オーストラリア、南アフリカ、中東地域に分布しています。 1993年アメリカのフロリダ州でこの害虫が発見されました。

ミカンハモグリガの生態と発生経過


ふ化~幼虫まで

卵は主として柔らかい若葉に産み付けられますが、若枝や幼果にも産み付けられることがあります。
平たい長円形で淡緑色半透明、直径0.31mm前後です。葉の表面に産みつけられた卵から孵化した幼虫(写真1)は、卵と葉の接触している箇所から卵殻と葉の表面を食い破って葉肉内に食入します。そして、表皮細胞の内容物を餌にしてトンネルを造りながら食い進んでいきます。この食い進んだトンネルの痕は葉の表面からでもはっきりとみとめられ、トンネルの痕には中央に黒っぽい糞の痕が一筋の線となって残されています(写真2)。

 

蛹化~成虫まで

食害は夜昼とも続けられ、蛹になる頃にはその長さは10センチ以上のトンネル(食害痕)が形成されます。
蛹になるときには必ず葉縁に達して、そこの部分を折り曲げて蛹化(写真3)します。蛹になるとき葉の表皮を破ってトンネルの外に出ます。トンネルの中で蛹化したら成虫に羽化した時、外に出られなくなるからでしょう。成虫(写真4)は白灰色で翅に一個の黒点をもち、翅の後ろにはやや長い毛がある蛾です。卵から成虫になるまでの期間は温度によって左右されますが、25℃では約23日位、30℃では約20日で、年間の世代数は10-11世代とされています。成虫で越冬し、冬でも餌(新芽)があれば発生しているので、完全休眠をしての越冬ではないようです。

【ミカンハモグリガ幼虫】

ミカンハモグリガ幼虫

【蛹化場所】

蛹化場所

ミカンハモグリガの被害とかいよう病の関係


ミカンハモグリガは若い葉に主として寄生加害し、時には若い枝や果実(幼果)にも寄生加害します(写真5)。加害をされても枯死したりすることはなくそのまま成長しますが、生育初期に食入をうけたり、1枚の葉に多数の虫の食入があると、葉の成長は妨げられ、変形したり、萎縮した葉(写真6)となってしまいます。この害虫による被害は主として夏秋葉の被害であるので成木では、あまり問題となりません。しかし、苗木や幼木では夏秋葉の被害は樹の発育に大きな影響を及ぼすので最大の害虫といえるでしょう。

また、ミカンハモグリガの食害痕はかいよう病の発生(写真7)と密接な関係があります。かいよう病菌はかんきつ類の葉や果実の傷口から侵入するのですが、ミカンハモグリガの食害痕はかいよう病菌の侵入口を提供していることになるからです。
台風が襲来する秋口の食害痕にはかいよう病が発生しやすくなり、台風の襲来によって激発した例がよくあります。夏から秋にかけての(夏秋梢)ミカンハモグリガ防除は秋のかいよう病の発生に大きな影響を与えるのでかいよう病の発生が少しでもみられる園ではミカンハモグリガの防除を必ず実施しておくことが大切です。

【果実(幼果)の被害】

果実(幼果)の被害

【ハモグリガの食害痕に発生したかいよう病】

ハモグリガの食害痕に発生したかいよう病

ミカンハモグリガの防除対策


ミカンハモグリガの防除は遅い春芽から秋芽までの間、葉が柔らかい間は加害されます。新梢が自己剪定をして若い葉が硬くなるまでは防除が必要になります。

薬剤によって散布間隔が異なりますので、薬剤のラベルをよく読んで実施してください。薬剤によっては粒剤を株元に処理しても防除できるようになりました。

シンジェンタジャパンの防除薬剤


シンジェンタジャパンではミカンハモグリガ剤としてアクタラ顆粒水溶剤アクタラ粒剤5アファーム乳剤マッチ乳剤などがあります。適用の内容など、それぞれの詳細については製品情報ページをご覧下さい。

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問

古橋 嘉一

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