病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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きゅうりのうどんこ病とべと病

 昔は夏の爽涼さを感じさせる野菜の代表であったキュウリも今ではスーパーなどで一年中姿が見られるようになってすっかり季節感がなくなってしまいました。いつでも何処かで栽培されるようになったキュウリで最も一般的に発生している病気がうどんこ病とべと病です。2002年の農林水産省の調査によると、うどんこ病は延べ50,935ha、べと病は58,148haもの広い面積のハウスや畑で発生しています。どちらも糸状菌によって引き起こされる病気であり、病原菌はいずれも生きている植物からしか栄養が摂れない絶対寄生菌です。

うどんこ病病徴

 うどんこ病は9,800種以上もの植物で発生することが知られている病気で、庭のバラや道端のコスモスなど身近な植物の上で簡単に見つけることができます。主に葉に発生する病気ですがイチゴなどでは果実に激しく発生することもあります。植物体の表面に小麦粉をふりかけたように見えるのがうどんこ病の特徴で、見たままの姿が病名になっています。このようにうどんこ病は沢山の植物で発生しますがうどんこ病菌にも多くの種があり、植物によってそれを侵すことができるうどんこ病菌の種も決まっています。

 うどんこ病菌は植物病原菌としては非常に変わった行動を取る病原菌です。他の病原菌は植物の体内に入って菌糸を伸ばしながら植物を侵害しますが、大部分の種のうどんこ病菌は付着した胞子が植物体の表面で菌糸を伸ばして新たな分生胞子を作り、ところどころで表皮を貫通して植物細胞内に作った吸器という器官で栄養分を摂取します。うどんこ病の特徴となっている白い粉状に見えるものは病原菌の菌糸や胞子そのものなのです。

 うどんこ病のもう一つの特徴は比較的乾燥した条件でも発生するということです。うどんこ病菌も空気中に飛散している分生胞子によって伝染します。他の病気菌と同じ様に胞子が発芽するには水分を必要としますが、うどんこ病菌の分生胞子は細胞壁の厚さが薄く空気中からでも容易に水分を取り込むことができるため、植物体表面に水滴がない湿度40-90%という条件下でも発芽し、発病させることが知られています。

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べと病病徴

 べと病は昔は露菌病という字を書いていました。「べと」とか「露」という字から推測できるように、べと病は梅雨時のような湿度が高い時に発生します。葉だけを侵し、初めは黄色い小さな斑点を出現し、それが徐々に拡大して葉脈に囲まれた角ばった褐色の病斑となります。湿度が高いときには葉の裏側に紫黒色のかびが見られ、本病を見分ける特徴となっています。これは気孔から出ている病原菌の分生子柄で、その先端に遊走子のうという胞子が形成され、そこから飛び出した遊走子が葉上の水の中を泳ぎ回り、気孔から侵入して新たな感染を引き起こします。この菌は植物体内で細胞の間に菌糸を伸ばし、吸器を細胞内に差し込んで栄養を摂っています。

 このように性質が大きく違う二つの病気ですが、どちらの病気も下葉から発生が始まり、放置しておくと急速に枯れ上がります。うどんこ病やべと病の発生を防ぐためには、罹りにくい品種を選択する、第一次伝染源となる被害茎葉の丁寧な処分撤去を行なう、過繁茂を避け空気の流通を良くするなどの栽培上の配慮も必要ですが、病気の早期発見と薬剤防除が不可欠です。現在、非常に多くの薬剤が登録されており、シンジェンタからもリドミルMZ水和剤がべと病に、アミスター20フロアブルがうどんこ病とべと病に登録されています。定植から収穫が終わる時期まで3か月前後も要するキュウリ栽培では、その間に行なわれる薬剤防除の回数も多くなるため、薬剤耐性菌が発生しやすい環境にあります。うどんこ病とべと病でもいくつかの防除剤で耐性菌の発生が報告されています。薬剤耐性菌の発生と蔓延を防ぐためにも、予防的散布を心がけることと、同じ剤を続けて使用するのではなく作用機作の違う防除剤を組み合わせて体系的に使うことが大切です。

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問
吉野 嶺一

2003年12月9日掲載

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