ぶどうの病害について -黒とう病-

病害虫・雑草コラム

ぶどうの主要な病害は晩腐病や灰色かび病、黒とう病、べと病などです。ここでは特に黒とう病の特長と発生原因、防除方法をご紹介します。

病害の発生が多いぶどう


【葉の病斑(葉脈に連なって出現)】

葉の病斑(葉脈に連なって出現)

日本は、温暖で多湿な気象条件から、ぶどうの病害の発生が多く、防除対策に苦慮しています。ぶどうブドウの病害の種類はウイルス病、細菌病、および糸状菌(菌類)による病害の三つに大別され、この中でも糸状菌による病害が最も多く発生します。国内で栽培されている品種は、大まかにヨーロッパ系品種(ヴィニフェラ系)、アメリカ系品種(ラブラスカ系)、およびこれらの雑種の三つに分類され、品種によって各病原菌に対する感受性が異なります。このため数種の品種を混植している場合には、各々の品種に対応した防除が必要です。それには病原菌の発生生態やぶどうブドウの生育ステージごとの被害状況を把握することが重要です。

主なぶどうの病害


発生が問題となるぶどうの病害は、晩腐病や灰色かび病、黒とう病、べと病等です。いずれの病害も降雨が多いと多発し、年によっては収量に影響を与えます。これらを効率的に防除するには、各々の病害の発生のしくみを理解し、農薬の安全使用基準を守りながら適期に適薬剤を散布する必要があります。また、病原菌の感染時期は生育初期から収穫期までの長期にわたるので薬剤による防除にも限界があります。そこで新梢の整理や摘房等の栽培管理を十分に行い、樹全体に光が良くあたるようにして病害の発生しにくい樹園地にすること、さらに袋かけや笠かけを行って果房への感染を防止することなど、感染を絶つための方法を組み合わせた防除が必要です。

【新梢の病斑】

新梢の病斑

黒とう病の特長と防除方法


黒とう病はいずれの品種にも発生しますが、特に罹りやすいのは欧州系品種です。

【果実の病斑(黒色、やや陥没した斑点)】

果実の病斑(黒色、やや陥没した斑点)

発病部位は葉、新梢、果実です。初め黒褐色円形の小斑点を生じ、のちに拡大して中央部は灰白色、周辺部が鮮紅色~紫黒色のやや凹んだ病斑を形成します。葉では主脈や葉脈上に病斑が連なって現れることが多く、また病斑が多数形成されると生育が不均衡になってひきつったようになります。病斑の中心部には亀裂を生じて穴があきます。新梢では病斑が多数連なることが多く、激発時には先端が黒く枯れることがあります。果実に発生すると肥大が不良となり、成熟期になっても軟かくならず、品質が低下します。

病原菌は結果母枝や巻きひげの病斑中で菌糸の形で越冬しています。4~5月の降雨時に病斑上に形成された分生子が雨滴によって分散し、各部位に達して侵入、感染します。潜伏期間は若い葉で3~7日、葉の生育とともに長くなり、硬化した葉や新梢では発病しなくなります。

防除は初期の発生を抑えることが重要で、5月が重点防除時期です。

秋田県果樹試験場
深谷 雅子

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