病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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チャノキイロアザミウマ

英名:Yellow tea thrips
学名:Scirtothrips dorsalis HOOD

 このシリーズの第2話でアザミウマ類の一般的なことを書きましたが、今回は茶や果樹、野菜、花の大害虫、チャノキイロアザミウマの話です。東南アジアではChilli thripsやAssam thripsとも呼ばれ、東南アジアが原産地とされていますが、現在ではオーストラリアやアフリカの一部の地域、ハワイにも分布するようになっています。ヨーロッパやアメリカでは侵入警戒害虫として位置づけられている害虫です。

わが国では、大正時代からお茶でその被害が問題になっていましたが、1960年代から、カキやブドウ、カンキツ類でも被害が大きな問題となり、その後、野菜や花でも害虫化し、時間の経過とともに重要性を増してきた害虫といえるでしょう。1960年代の文献では、この害虫の寄主植物は6種類ほどの記載でしたが、現在では140種類もの植物が記載されるようになっています。害虫としての重要性が増した原因ですが、「これまで寄生できなかった植物にも寄生加害できるようなチャノキイロアザミウマの新しい系統が出現したため」なのか、ただ単に、「生物的な要因や環境的な要因で個体数が増えたために害虫としての重要性が大きくなった」のか、まだ明らかにされていませんが、私の独断と偏見による推測では前者ではないかと考えています。

各ステージの形態

 成虫は体長が0.8~0.9mmで、メスはオスに比べ太めでやや大型(写真1)です。両者とも体色は黄色か淡黄色ですが背中の部分は羽の色で黒ずんでみえます。お茶の葉やカンキツ類の果実上を活発に動き回るので肉眼でも幼虫とは容易に区別できます。卵はソラマメ状で乳白色をしており、0.2mm前後の大きさです。植物の組織内に産卵され、産卵されているお茶の葉を日にかざしてみれば卵を見ることが出来ます。幼虫(写真2)は1令幼虫から2令幼虫と経過します。大きさは1令が0.3~0.5mm、体色は白色で半透明、2令は体長が0.5~0.8mmで体色はやや1令より黄色がかった色になります。
蛹(写真3)は1令蛹から2令蛹へと経過します。蛹になると摂食を止めますが、他の昆虫と違うのは動くことが出来ることです。体長は0.7~0.9mm。羽の原基が形成されるようになります。

※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

  • 写真1:チャノキイロアザミウマ成虫

  • 写真2:チャノキイロアザミウマ幼虫

  • 写真3:チャノキイロアザミウマ桶

生活史

 この害虫は、東南アジアが原産とされており、休眠をしないで越冬に入ります。11月中旬頃になると老熟幼虫は越冬場所の落葉の下や樹皮の割れ目などに入り蛹化し、1月から2月にかけて成虫になっている個体が多いものと考えられます。3~4月頃になって、茶の新芽が出てくると、成虫はこれらの新芽に産卵を始めます。成虫の雌は交尾してもしなくても産卵しますが、交尾した雌は「雌と雄」の卵を産み、交尾しない雌が産む卵はすべて「雄」です。

この害虫の発育ゼロ点は9.7℃で、これ以上の気温になると発育が進むことになります。発育ゼロ点から有効積算温量を決め、年間の世代数を計算すると年によりフレがありますが、おおよそ7~9回の世代を繰り返していることになります。各ステージの発育所要日数は、温度により大きく左右され、卵期間は3~10日、幼虫期間が3~5日、蛹期間が5~7日です。夏の活発に活動する時期の卵から成虫になるまでの期間は、15日から20日間。成虫の生存期間は夏の時期で約20日間とされています。

被害

 この害虫のお茶への加害は、芽が展葉していない芽包、若葉、花などですが、芽包が加害されると、芽の発育は遅延し、ひどく加害された場合、加害された芽は褐変したり、枯死することもあります。若い葉が加害された場合(写真4、5)、葉の中央付近が褐変硬化し、奇形葉となって品質低下の原因となります。一番茶の時期は寄生密度が低いため、防除を必要とすることはほとんどありません。しかし、2番茶、3番茶の時期になると寄生密度が高くなるので、防除を実施しないと大きな被害を受けることになります。

  • 写真4:チャノキイロアザミウマ茶園被害

  • 写真5:チャノキイロアザミウマ茶芽被害

防除対策

 2番茶の発芽期~展葉期(6月上旬~中旬)、3番茶発芽期~展葉期(7月中旬~下旬)が重点防除時期ですが、秋期生育期(9月~10月)の防除も重要です。この害虫は新芽が発芽してくれば、それに間断なく産卵してくるので、密度が高いときは薬剤散布後に園内を観察して寄生密度が高い場合再度10日間隔くらいの薬剤散布をする必要があります。当社の茶や他の作物でのチャノキイロアザミウマに対する登録農薬については、ホームページに掲載されていますのでご覧下さい。

(余談)

 私がチャノキイロアザミウマに最初に出会ったのは、1967年の日本平のみかん園で大きな被害が出たときのことです。
 今回、同じ研究室で一緒に研究をやっていた静岡県農業試験場の研究主幹 多々良明夫博士が「チャノキイロアザミウマ-おもしろい生態とかしこい防ぎ方-」を出版しました。(農山漁村文化協会)現場で永年この害虫を観察し、防除を研究してきた実際の体験をもとに書かれているので、興味深く読むことが出来ます。また、防除をやっている農家の人たちにも防除のやり方について参考になることでしょう。是非、ご一読ください。

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問
古橋 嘉一

2005年1月20日掲載

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