病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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茶のクワシロカイガラムシ

※写真をクリックすると大きい画像をご覧いただけます。

防除が難しいクワシロカイガラムシ

 クワシロカイガラムシは茶樹の枝に寄生するカイガラムシの一種(写真1)で、静岡県などの西南暖地では年3回発生します。多発すると茶の芽伸びが悪くなるだけでなく、枝や株が枯死する被害が発生します(写真2)。本虫は、近年、全国的に多発傾向にあり、静岡県の茶園でも10年ほど前から多発生状態が続いています。多発が続く原因として、気象条件や栽培管理方法の変化、虫の薬剤感受性の低下、農薬の天敵への影響等、様々な要因が考えられますが、はっきりしていません。
 本虫が難防除害虫となっている主な理由は、茶樹の複雑に入り組んだ枝に寄生しているため薬剤が虫体に到達しにくいことと、防除適期は幼虫定着直後(写真3)の数日間に限られるのですが、その適期の把握が難しいためです。

  • 写真1
    クワシロカイガラムシの
    雌成虫と卵

  • 写真2
    被害茶園

  • 写真3
    クワシロカイガラムシの
    ふ化幼虫

効率的な薬剤防除技術

 そこで、薬剤を樹冠内の枝に均一に付着させるために様々な形状のクワシロ専用散布ノズルが開発されています。これら手散布用ノズルの中では、「突っ込み型」(写真4)と「アーチ型」(写真5)の性能が高く、現場でも普及しています。また、乗用型防除機についても、性能の高いクワシロ専用ノズルの開発が進められています。
 防除適期の把握方法については、従来は、実体顕微鏡下で採集した雌成虫の介殻(かいがら)を剥がしてふ化率を調査する「卵塊調査法」が主でした。しかし、この方法はたいへん煩雑で経験が必要なため、もっと簡便に適期を知る方法として、ふ化幼虫を捕獲して発生ピークを把握する「粘着トラップ法」が開発され、クワシロ用のトラップも販売されるようになりました。さらに、本虫の有効積算温度を利用した防除適期予測法が開発され、気温データだけで正確に防除適期を予測することもできるようになりました。

  • 写真4
    クワシロ用突っ込み型ノズル

  • 写真5
    クワシロ用アーチ型ノズル

土着天敵の保護も大切

写真6
ハレヤヒメテントウの幼虫

このように、薬剤防除に関しては、従前に比べるとより効率的で的確な防除が可能となっています。しかし、十分な防除効果を得るためには1,000リットル/10aという大量の薬液が必要であり、しかも、投下量の半分程度が地面に散逸することも明らかになっています。一方、茶園には、寄生性天敵のチビトビコバチや捕食性天敵のハレヤヒメテントウ(写真6)など様々な土着天敵が生息しています。こうした土着天敵を保護することで、クワシロカイガラムシの密度を抑制し安定化させることも可能です。今後は、土着天敵をできるだけ保護しつつ、効率的で無駄のない防除体系を構築することが必要です。

 

静岡県茶業試験場病害虫研究室
小澤朗人

2006年9月12日掲載

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