箱処理剤を活用した、斑点米カメムシ防除の可能性

病害虫・雑草コラム

畦畔や農道などの除草とカメムシに効果のある箱処理剤を組み合わせれば、斑点米カメムシの発生を大幅に低減できます。(独)東北農業研究センター 斑点米カメムシ研究東北  サブチーム長 榊原 充隆さんにお話しをお伺いしました。

斑点米カメムシでは、どのような種類が問題になっていますか。


斑点米カメムシによる落等は1999年ごろから顕著になり始め、落等率が10%を超える地域が頻発するようになりました。
斑点米の原因となるカメムシは大型から小型までいくつかの種類が確認されていますが、なかでも北日本を中心に問題となっているのが小型の「アカスジカスミカメ(以下、アカスジ)」と「アカヒゲホソミドリカスミカメ(以下、アカヒゲ)」の2種。玄米の吸汁加害された部分に菌が繁殖して斑点が生じます。

【アカヒゲホソミドリカスミカ】

アカヒゲホソミドリカスミカ

【アカスジカスミカメ】

アカスジカスミカメ

【斑点米カメムシにより吸汁加害された玄米】

斑点米カメムシにより吸汁加害された玄米

アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメの生態について教えてください。


両カメムシともに、ストロー状の口針で玄米を吸汁しますが、主に登熟前半に籾頂部から吸汁する場合と、登熟中期から生じる割れ籾のすき間から吸汁する場合があり、割れ籾が多い圃場ほど斑点米の発生も多いことが報告されています。
割れ籾は、夏に“やませ”が吹いて冷え込むことで玄米が小さくなり、その後、急激に気温が上昇することで籾が割れやすくなる現象。あきたこまちなどの早生品種では、割れ籾が発生しやすく、斑点米カメムシの被害も多くなる傾向にあります。

アカスジは、水田周辺に存在する成虫が出穂時期に水田へ侵入し、加害。アカヒゲは、幼虫が水田で増殖し、幼虫が加害するということが確認されています。
アカスジ・アカヒゲの両カメムシともに、イネ科植物に好んで寄生するので、畦畔、農道、休耕田などの雑草や、本田のノビエなどを放置すると発生リスクが極めて高くなります。

【人工的に作り出した割れ籾】

人工的に作り出した割れ籾

【水田近くのイタリアンライグラス群落】

箱処理剤を活用した斑点米カメムシ体系防除の例

今後のカメムシ防除について、どのようにお考えですか。


品種や地域によって異なりますが、出穂後のカメムシ防除は通常1回〜3回行なっているのが現状です。従来よりカメムシに対して長期残効を有する箱処理剤があれば、今まで出穂後に行なっていた茎葉処理のカメムシ防除を散布するタイミングを後ろにずらすことができると考えられます。
つまり、カメムシ防除を2回行なっていた地域はそのうち1回を省略できることになるわけです。

【イタリアンライグラス】

水田近くのイタリアンライグラス群落

【メヒシバ】

メヒシバ

【メヒシバのアカスジカスミカメ】

イタリアンライグラス

【箱処理剤を活用した斑点米カメムシ体系防除の例】

メヒシバのアカスジカスミカメ

例えば、1等米から2等米に落等すると、農家さんは1俵あたりで600〜1000円程度の収入減になり、収量が反あたり6俵なら3600〜6000円前後の収入減になってしまいます。残効が長い箱処理剤を活用すれば、本田散布のカメムシ剤を省略して浮いたコストが生じるので、斑点米による収入減をカバーして、まだお釣りがくる計算になりますね。
また、箱処理剤を活用した体系防除とともに、出穂期前に畦畔や圃場周辺の除草を行い、イタリアンライグラス、メヒシバなどイネ科雑草の密度を減らして両カメムシの発生リスクを下げることも大事ですね。さらに、色彩選別機による厳密な選別を行なえれば理想的といえるでしょう。

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