斑点米カメムシの特徴と生態

病害虫・雑草コラム

斑点米カメムシ類は、稲の穂を吸汁して玄米に斑紋を作るため玄米の品質を損なう被害を与えます。主な斑点米カメムシの特徴と生態を理解し、しっかりと防除しましょう。

大型斑点米カメムシの特徴と生態


クモヘリカメムシ

【クモヘリカメムシ成虫】

クモヘリカメムシ成虫

クモヘリカメムシ成虫の体長は15~17mm程度。主要発生地は西日本全域から関東・南東北の太平洋側です関東では、6月中旬にイタリアンライグラス圃場で発生がみられ、繁殖した第1世代成虫が近隣の水稲へ移動し加害します。水稲収穫後は主に畦畔のエノコログサ、メヒシバを餌として第2世代(越冬世代)が成育します。

加害は縫合部からが多く、成虫・幼虫ともに稲の子実粒を加害。登熟初期に水田へ侵入した成虫が産卵するので、登塾中期以降にふ化した幼虫が急増し、子実粒を加害します。登熟期の幼虫防除が重要で、出穂10~14日後の本田防除が有効です。

【クモヘリカメムシの加害パターン】

 

クモヘリカメムシの加害パターン

 

ホソハリカメムシ

【ホソハリカメムシ成虫】

ホソハリカメムシ成虫

ホソハリカメムシの体長は9~ 11mm程度。主要発生地は関東以西です。水田周辺の雑草地で発生し、稲が開花をはじめると、成虫が水田に飛来し、吸汁加害をはじめます。また、稲への産卵により幼虫が増殖し、登熟中期以降は水田内で発生した幼虫・成虫が激しく加害します。

登熟初期は、加害によるダメージが大きいので子実粒の内容物が吸汁されて、ペチャンコになった被害粒が発生することが多いようです。

 

ミナミアオカメムシ

【ミナミアオカメムシ成虫】

ミナミアオカメムシ成虫

ナミアオカメムシ成虫の体長は12~ 16mm程度。主要発生地は、本州、四国、九州です水田内で世代を繰り返すことができるので、登熟中期から後期には水田内の幼虫・成虫密度が急増。水田周辺の畑や雑草地からの飛来量も多いので注意が必要です。

籾のどの部分からでも加害できる無差別加害型で、登熟初期から後期までの全期間を加害します。成虫・幼虫ともに、吸汁加害による被害が大きく、登熟初期においては被害子実粒がペチャンコになるほど、ダメージと被害量が著しい斑点米カメムシです。

中型斑点米カメムシの特徴と生態


トゲシラホシカメムシ

【トゲシラホシカメムシ成虫】

トゲシラホシカメムシ成虫

トゲシラホシカメムシの体長は4.5~ 7mm程度。主要発生地は、本州、四国、九州です。トゲシラホシカメムシは周辺の雑草地だけではなく、水田内でも増殖するので、幼虫・成虫ともに稲の子実粒を加害して被害粒を発生させます。また、登熟初期に水田内へ侵入した成虫は、水田内で産卵し、登熟中期以降には、これらがふ化した幼虫が急増して被害粒を増加させます。

トゲシラホシカメムシは口器が強いため、籾のどの部分からでも吸汁加害することができる無差別加害型。登熟初期から登熟後期まで全期間に渡って加害します。

 

オオトゲシラホシカメムシ

【オオトゲシラホシカメムシ成虫】

オオトゲシラホシカメムシ成虫

オオトゲシラホシカメムシの体長は5~ 7mm程度。主要発生地は、北海道、東北、北関東、北陸です。大きさ、形、色などがトゲシラホシカメムシとよく似ており、一見して見分けることが難しい中型カメムシです。雑草地や畑地でも発生が見られますが、水田に移動して増殖し、幼虫・成虫ともに登熟中の子実粒を好んで吸汁加害します。水田内で増殖した幼虫・成虫は、登熟中期以降に急増。その影響で登熟後期に被害粒が増加します。

トゲシラホシカメムシ同様に口器が強く、籾のどの部分からでも加害する無差別加害型のカメムシです。

小型斑点米カメムシの特徴と生態


コバネヒョウタンナガカメムシ

【コバネヒョウタンナガカメムシ成虫】

コバネヒョウタンナガカメムシ成虫

コバネヒョウタンナガカメムシの体長は5~ 6mm程度。北陸を中心に全国に分布しています。水田周辺の雑草地や牧草地で多発生し、登熟中の稲に移動して増殖、加害します。周辺の雑草地や牧草地での発生時期が、稲の登熟時期と重なると被害が増大することもあります。

登熟初期には、子実粒の頂部を加害することが多い小型カメムシです。加害によって発生した被害部は、子実粒の頂部や基部などの局部にとどまることが多く、全体に広がることが少ないのが特徴です。吸汁加害が子実粒に及ぼす影響は、ホソハリカメムシやミナミアオカメムシとくらべて軽度で済む傾向にあります。

 

アカヒゲホソミドリカスミカメ

【アカヒゲホソミドリカスミカメ成虫】

アカヒゲホソミドリカスミカメ成虫

アカヒゲホソミドリカスミカメの体長は5~ 6mm程度。主要発生地域は、青森県、秋田県、山形県、新潟県など北日本の日本海側から北陸地域にかけて分布しています。イネ科植物でしか繁殖できず、秋にメヒシバやエノコログサなどの葉鞘に産卵・越冬します。春に幼虫が孵化し、生長して成虫に。成虫の発生盛期は、越冬世代が5月中旬、第1世代は6月中旬、第2世代は7月中旬、第3世代は8月中旬に活動します。

アカスジカスミカメと同様に卵で越冬します。吸汁部位は、籾の頂部と側部に集中。登熟中期以降は、割れ籾が生じた際に側部のすき間から玄米を吸汁する側部加害が中心となります。出穂期に第2世代成虫が侵入し、産卵、第3世代幼虫が加害の中心になります。防除適期は、出穂7~10日後と24~30日後が目安となります。

 

アカスジカスミカメ

【アカスジカスミカメ成虫】

アカスジカスミカメ

アカスジカスミカメの体長は5~ 6mm程度。主要発生地域は、北日本の太平洋側及び中国・近畿です。卵で越冬し、イタリアンライグラス等のイネ科植物に産卵増殖。水稲出穂期以後に発生する第2世代以降の成虫が水田に飛来侵入し、吸汁加害します。

アカスジカスミカメは岩手県で年3回程度、広島県で年5回程度の世代数を繰り返す小型カメムシ。80年代以降、転作牧草としてイタリアンライグラスの作付面積が増加したことが、本種の分布拡大に関係していると考えられています。また、最近になって、カヤツリグサ科のイヌホタルイやシズイといった水田雑草も、アカスジカスミカメの増殖原因になっている可能性が指摘されるようになりました。

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