水田雑草について－多年生雑草の種類と生態
水田雑草を大きく分けると、一年生雑草と多年生雑草に分けることができ、さらにその中のイネ科、広葉などに分類することができます。ここではクログワイをはじめとする様々な多年生雑草の生態をご紹介します。
クログワイ （カヤツリグサ科雑草）
カヤツリグサ科。地下茎および秋に作った黒褐色球状の塊茎で繁殖。全国で発生し、いったん侵入すると増殖力旺盛かつ塊茎の寿命が長く、防除が厄介なハリイ属の多年草。同種でさらに大型のオオクログワイの塊茎は中華の食材。
【塊茎】
【成植物】
茎葉処理除草剤の水稲収穫後処理がクログワイの塊茎形成に影響を及ぼします
クログワイは地下部の塊茎で繁殖するので、根まで除草成分が浸透移行する茎葉処理除草剤で塊茎形成を抑制し、翌春の発生を軽減することが有効な手段となります。
シンジェンタジャパン（株）中央研究所では、水稲刈取りの際、同時に刈込まれたクログワイに対して茎葉処理除草剤タッチダウンｉＱの50倍液を処理し、翌春に塊茎形成の状況を調査しました（2006年度試験）。その結果、無処理区では土壌サンプリング枠［50x50x20（D）cm］あたり50個の塊茎が形成されていたのに対して、タッチダウンｉＱ処理区の塊茎数は3 8個であり、無処理区に比べて24%少ない値でした。
【水稲収穫直後のクログワイの塊茎形成状況】
塊茎の発芽能を減少させる効果も確認されています
また、それら塊茎の発芽状況を調査したところ、無処理区およびタッチダウンｉＱ処理区の発芽個体数はそれぞれ44個体（ 発芽率88%） および26個体（発芽率66%） であり、タッチダウンｉＱ処理区における次世代の発生個体数は無処理区に比べて43%少ない値が得られました。
以上の結果より、タッチダウンｉＱの水稲収穫後50倍液処理は、翌春のクログワイの塊茎数および発芽能を減少させ、次世代個体の発生を有意に抑制することが確認されています。
【タッチダウンiQの水稲収穫後50倍駅処理がクログワイの塊茎形成に及ぼす影響（2006年社内試験）】
イヌホタルイ （カヤツリグサ科雑草）
カヤツリグサ科。水田におけるホタルイ属の中では最も発生量が多い。水田では主に種子繁殖だが、越冬株が残って多年生化するため分類上は多年生。
【成植物】
【幼植物】
ミズガヤツリ （カヤツリグサ科雑草）
カヤツリグサ科。水田における最も代表的な多年生大型のカヤツリグサ類。主に地下茎および秋に作った茶褐色紡錘型の塊茎で繁殖。寒冷地以北での発生は少ない。
【成植物】
【塊茎】
【開花期】
コウキヤガラ （カヤツリグサ科雑草）
カヤツリグサ科。地下茎および秋に作った球形の塊茎で繁殖。主に干拓田で多い。いったん侵入すると増殖力旺盛かつ塊茎の寿命が長く、防除が厄介なホタルイ属の多年草。
【成植物】
【地下根茎による増殖】
【花穂】
シズイ （カヤツリグサ科雑草）
カヤツリグサ科。ホタルイ属の多年草で、主に地下茎および秋に作った球形ないしは半円形の塊茎で繁殖。主に寒冷地以北で増加しているが、暖地でも一部の山間地では発生がみられる。
【成植物】
【塊茎からの発生】
ウリカワ （広域雑草）
オモダカ科。沈水性の多年草で、地下茎および地下茎の先端にできる芽を持つ球状の塊茎で繁殖。全国で発生するが、主に温暖地以西で多い。近年、SU抵抗性生物型が見つかっている。
【花】
オモダカ （広域雑草）
オモダカ科。全国で発生する多年草。前年秋に形成された種子および芽を持つ球状の塊茎で繁殖。幼植物は同属のウリカワに似るが、次第に矢尻状の葉が出て大型になるので区別できる。近年、SU抵抗性生物型が見つかっている。
【塊茎】
【塊茎からの発生】
セリ （広域雑草）
セリ科。ほふく茎を伸ばして増殖する多年草。独特の香りと風味を持つ春の七草の一つで、栽培種もある。
【開花期】
ヒルムシロ （広域雑草）
ヒルムシロ科。水面上にササの葉状の葉を浮かべ、地下茎を伸ばして増殖する多年生雑草。秋に地下茎の先にバナナ型の鱗茎をつくる。
アシカキ （イネ科雑草）
東北以南の畦畔で普通に見られる多年生イネ科雑草。新葉は巻いた状態で抽出し、匍匐茎を伸ばし増殖する。サヤヌカグサと同属で葉鞘は著しくざらつき、葉舌は明瞭。畦畔から水田へと侵入するので注意が必要な雑草。
キシュウスズメノヒエ （イネ科）雑草
主に関東以西の暖地に発生が多い多年生イネ科雑草。新葉は巻いた状態で抽出し、匍匐茎を伸ばし増殖する。アシカキ属とは異なり葉鞘はざらつかず、白毛が散生、葉舌は目立たない。
