ウンカの防除 ウンカの最新動向と防除の重要性
今後ますます、害虫としての重要性が高まるヒメトビウンカ。飛来状況に注意し、効果の高い薬剤を選びましょう。九州沖縄農業研究センター 難防除害虫研究チーム チーム長 松村 正哉さんにお話をお伺いしました。
ウンカの飛来源地域での現在の発生状況について
ベトナム北部の一部地域や中国南部では、2005年頃からトビイロウンカとセジロウンカの多発生が続いています。ヒメトビウンカとイネ縞葉枯病は、2000年頃から、九州のちょうど対岸の揚子江下流の中国・江蘇省を中心とした地域で多発生が起こっています。
【ウンカの種別多発生地域】
ヒメトビウンカも海外飛来するのでしょうか
2008年6月に九州の西海岸地域や中国地方の日本海側を中心に、ヒメトビウンカが海外飛来して、それがもとになってイネ縞葉枯病の多発生が起こっています。これらの飛来源は中国・江蘇省のあたりと推定されています。中国・江蘇省では小麦の収穫時期が6月はじめ前後で、麦刈りによって飛び立ったヒメトビウンカが、低気圧にともなう強い風に乗って日本に飛んできたと考えられます。
【2008年6月に中国江蘇省から西日本にヒメトビウンカが大量に飛来】
飛来した虫は、イネ縞葉枯病ウイルスの保毒虫率が高く、また薬剤抵抗性の特性が日本の土着の虫と違うこともわかってきました。今後も飛来状況に注意すると共に、ヒメトビウンカに対して効果の高い苗箱施用薬剤を選択することが重要です。ヒメトビウンカとイネ縞葉枯病については、最近は関東から近畿地方にかけても一部の地域で多発生しています。この多発生の原因はまだよくわかっていませんが、温暖化の影響もあるかもしれません。いずれにしても、ヒメトビウンカについては、これから害虫としての重要度がますます高くなると思います。
【2009年に韓国西岸に飛来して大発生したヒメトビウンカ】
薬剤の効きにくい抵抗性ウンカが急増
同じ薬剤を使い続けると、その薬剤に対して抵抗性が発達することがあります。2005年頃から、日本に飛来するトビイロウンカやセジロウンカに一部薬剤の抵抗性が発達していることがわかってきました。これは、飛来源にあたる中国やベトナム北部で、これらの薬剤が大量に使われていることが大きな原因です。ヒメトビウンカについても、最近、いくつかの薬剤に対して抵抗性が発達していることがわかっています。
トビイロウンカとセジロウンカは有効成分に対する抵抗性が発達
【トビイロウンカにおける抵抗性の発達】
【セジロウンカにおける抵抗性の発達】
※九州沖縄農業研究センターのデータによる
今後のウンカ防除のポイント
収穫期に稲を枯らしてしまったりウイルス病をうつすウンカは、きちんと防除しないと、私たちの主食であるコメの収量が大きく減少します。害虫を防除するためには天敵を使ったり抵抗性品種を使う方法がありますが、現時点では農薬を使った防除が最も効率的で経済的であると考えられます。
近年ではウンカの種によって薬剤に対する抵抗性に違いが出てきていますので、防除対象のウンカに効果が高い薬剤をしっかり選定することが重要です。育苗箱施用剤の場合には、決められた量をきちんと処理することが重要です。
【トビイロウンカ抵抗性遺伝子を導入した稲品種「関東BPH1号」(写真左側)。 抵抗性を持たない稲(写真右側)では坪枯れが起きている】