一斉防除により害虫密度を低減し、キャベツの安定出荷を実現
作付面積約1100haにおよぶ全国屈指のキャベツ産地JA豊橋管内では、害虫発生密度が高まる9~11月にかけて、毎年キャベツ圃場に対して一斉防除を実施していらっしゃいます。キャベツの害虫防除対策についてJA豊橋 営農部営農指導課の土屋博之係長、同JA第一事業所の高須雄司さん、金井優策さんにお話を伺いました。
【JA豊橋 営農部営農指導課の土屋博之係長(右)と弊社名古屋支店 大黒有紗】
まず、産地のプロフィールについて教えてください。
土屋係長:
当JA管内は秋冬キャベツが主力で、1~3月に取引される東京の市場のキャベツの2~3個に1個は当管内産と言われるほどの大産地です。冬系品種の特徴は、固く締まってずっしりと重く、加熱すると甘みが増すこと。
品種はしぶき、そらと、りくと、冬のぼりなどがあります。春系品種の特徴は、やわらかくて生食でも甘い食べやすさ。主な品種はさちぞら、きよな、さちなみ、ゆいななどです。
高品質のキャベツ栽培のポイントについて教えてください。
土屋係長:
当JA管内は先ほど申し上げたように、安定出荷という大産地ならではの責任があります。そのためには、時期に応じた品種の選定や品種ごとの定植時期などは重要なポイントになるので、生産者の皆さんにきめ細かなアドバイスを行っています。例えば同じ冬系品種でも、8月下旬に定植する品種は2ヵ月で収穫を迎えますが、9月下旬に定植する品種は収穫まで7ヵ月ほどかかり、生育期間に5ヵ月もの違いがあります。
前半に出荷されるしぶきなどは暑さに強く、後半出荷のそらと、冬のぼりは寒さに強い。こうした前半と後半の切り替わり時期には、特に適切なタイミングで定植しないといけません。また、施肥についても品種や時期に応じてタイミングや量についてアドバイスを行います。
【冬系キャベツは葉のまきが硬い】
キャベツでは、どのような害虫が問題になっていますか。
土屋係長:
露地栽培ではシロイチモジヨトウ、コナガ、ハスモンヨトウ、オオタバコガ、ハイマダラノメイガといったチョウ目害虫が問題となっています。その他には、アブラムシ類も定期防除が必要な害虫です。
近年問題なのはシロイチモジヨトウで、以前はキャベツ畑で見たことがない害虫だったのですが、3年ぐらい前から発生が顕著になってきました。外葉だけでなく芯部まで潜り込むので食害による被害が大きく、効果のある農薬が少ないので、いちばんの難防除害虫と言えますね。
【コナガ】
【ハスモンヨトウ】
【ハイマダラノメイガ】
JA豊橋管内では、9月から害虫の一斉防除をされているそうですね。
土屋係長:
9月上旬から11月上旬までは害虫の発生量が特に多いので、地域全体で害虫密度を抑えるためにJA管内のキャベツの一斉防除を行っています。この指針となる一斉防除暦は、気象条件や害虫の発生消長、薬剤の効果などを考慮して毎年見直しを実施。
4月にキャベツ部会員を集めて、その年の防除に関する全体説明会を実施しています。当JAでは、令和元年度の一斉防除暦の定植後第一回目の散布として、コナガやオオタバコガなどチョウ目害虫全般に幅広く速効性のあるアファーム乳剤を採用し、チョウ目害虫の密度低減に役立てています。
地域の一斉防除のほかに、害虫密度を下げる有効な方法はありますか。
土屋係長:
圃場や圃場周辺の雑草防除は、害虫の密度を減らすのに有効な手段です。キャベツの収穫のあとは、雑草を速やかにすき込んだり、除草剤で除草するなどして害虫のすみかをなくすことで、害虫の密度をかなり下げることができます。
昨年、試験を実施されたミネクトデュオ粒剤についてお聞かせください。
土屋係長:
当JA管内ではキャベツの他に白菜やブロッコリーでも一斉防除を実施しています。キャベツとブロッコリーの複合経営のケースも多いので、これらの作物に登録のある薬剤が望ましいんです。その点、ミネクトデュオ粒剤はキャベツ、ブロッコリー、白菜など幅広い作物登録があって使いやすい。それに、チョウ目害虫に幅広く効くので育苗期防除に最適です。
高須さん:
当事業所で試験をした際は、キャベツの苗にコナガがほとんどつきませんでした。播種覆土後に使えて便利だし、定植後1週間経過しても残効がありました。
金井さん:
私は、白菜の苗の試験を担当したんですが、すごく防除効果があって、苗の食害がありませんでしたね。
【収穫されたキャベツ】
今後の取り組みについてお聞かせください。
土屋係長:
以前は5~6月のキャベツ出荷が少なかったのですが、今後はその時期のキャベツも増やしていきたい。また、夏秋キャベツの大産地とパートナーシップを結び、通年で市場に安定供給できるような体制も模索中です。
今後もキャベツの大産地としての責任を果たし、市場からの信頼を守っていきたいと思います。