てんさい圃場の除草効率アップ「パクパク(PakuPaku)」の実力とは

産地訪問
杉山欽一さん

養分競合によりてんさいの収量をダウンさせてしまう畑地の難防除雑草。特に一年生広葉雑草は、選択性除草剤では取りこぼしやすく、途中で手取り除草に頼らざるを得ないことが多いそうです。
その労力を軽減するため、北海道十勝管内では「非選択性除草剤タッチダウンiQ」を除草剤塗布器「パクパク(PakuPaku)」(以下、パクパク)で泡状にし、一年生広葉雑草に直接塗布する方法が注目されています。
その導入効果と具体的な施用方法などについて、北海道河東郡音更町のJAおとふけ管内で有限会社杉山農場を経営する杉山欽一さん、農業資材卸会社 株式会社サングリン太陽園の本瀬利幸さんにお話を伺いました。

【パクパクロングPK89L(画像提供:株式会社サンエー)】

パクパクロングPK89L(画像提供:株式会社サンエー)

十勝管内のてんさい栽培での問題雑草と、除草作業における課題について教えてください。


杉山さん:
地域で問題になっているのはタニソバ、イヌタデ、うちの圃場ではツユクサ、アカザといった一年生広葉雑草が問題雑草です。てんさい圃場の除草作業は、定植後に得意な草種が異なる3種の選択性除草剤を混用してスプレイヤーで散布するのですが、ツユクサ、アカザといった一年生広葉雑草は選択性除草剤では取りこぼしやすく、特にスプレイヤー散布で選択性除草剤が届きにくい圃場の角などでは、取りこぼしが避けられません。

定植後、てんさいの生育期では、飛散するとてんさいまで枯れてしまうような非選択性除草剤は散布できないので、残る手段は手取り除草しかないんです。手取り除草は7月の暑い時期に、朝から晩まで連日にわたって行うので、その労力の大きさが課題になっていました。

【杉山欽一さん(左)、本瀬利幸さん(右)】

杉山欽一さん(左)、本瀬利幸さん(右)

【杉山さんの農場】

杉山さんの農場

その手取り除草の課題をどのように解決されたのでしょうか。


杉山さん:
以前からだいず圃場でも同じように一年生広葉雑草が難防除雑草として問題になっていたので、だいず圃場の難防除雑草対策として5年前に、非選択性除草剤タッチダウンiQと除草剤塗布器「パクパク」を導入しました。
「パクパク」はホッチキスを大きくしたような形で、タッチダウンiQを直接、雑草に塗り付けることができます。
それで今年(2020年)の3月に、農業資材でお世話になっているサングリン太陽園さんから「パクパクがてんさいでも使えるように適用拡大された」という話を伺ったんです。

タッチダウンiQとパクパクの組み合わせは労力の低減に非常に効果的で、てんさいの除草にも使いたいとずっと思っていたので、さっそく今年6月にてんさい圃場の広葉雑草に使ったんです。除草作業が一気に楽になりましたね。

【タッチダウンiQのパクパク施用で枯れあがったツユクサ】

タッチダウンiQのパクパク施用で枯れあがったツユクサ

「パクパク」の具体的な使用方法について教えてください。


杉山さん:
タッチダウンiQの2倍希釈液を入れた容器を首からぶら下げ、細いビニールパイプを通じて吸い上げた希釈液を泡状にし、直接雑草に塗り付けます。操作は「パチン、パチン」とホッチキスのように、パクパクの上下のグリップを握って離すだけでノズルから泡が出てくるので、とても簡単です。
2018年からは電動アタッチメントを導入し、作業がより一層ラクになりました。以前の手動タイプの場合は、長時間使い続けていると手が痛くなることもあったんです。

また、だいずに使っていた当初は、ショートタイプと呼ばれるノズルが短いタイプしかなかったので少々腰を曲げる必要がありました。しかし、ロングタイプが発売されてからは腰を曲げずに作業できるようなったんです。パクパクでの除草作業は、主に妻が中心となって作業しているのですが、身体への負担も軽減されているようですね。

【電動アシストPB4G装着(画像提供:株式会社サンエー)】

電動アシストPB4G装着(画像提供:株式会社サンエー)

【電動アシスト単体(画像提供:株式会社サンエー)】

電動アシスト単体(画像提供:株式会社サンエー)

タッチダウンiQの除草効果についてはいかがでしょうか。


杉山さん:
てんさい圃場では、6月下旬ごろ草丈15cmほどの広葉雑草にパクパクで施用したのですが、よく枯れて抑草効果が長いので、手取り除草の必要がなくなりましたね。パクパクで塗布した泡は30分くらい雑草にとどまってじっくりと浸透し、泡が乾いてしまえばその後に雨が降ってもしっかり効いてくれます。施用後3〜4日間は雨が続いても、その翌日には黄色く枯れているのがわかるくらいですから。

除草効果を高めるパクパクの上手な使い方を教えてください。

杉山さん:
パクパクの泡を塗布できるのは、1株の雑草につき3ヵ所までと決められています。
これまでいろいろなポイントを試してきましたが

  • 新芽が出てくる雑草の生長点
  • 葉と茎の付け根
  • 最上位葉

といったポイントに塗布するのが効果的なようです。つまり、新しい芽や葉をいかにして抑え込むかが、その後に残さなないためのコツといえるのではないでしょうか。
初めてパクパクを使う人には、ぜひ参考にしてほしいですね。

今後のパクパクとタッチダウンiQの使用意向についてお聞かせください。


杉山さん:
タッチダウンiQと同じグリホサート系の非選択性除草剤は他にもありますが、パクパクで施用できる剤はタッチダウンiQだけです。聞くところによると、薬液が泡状になるのはタッチダウンiQに2種類の展着成分が含まれているからだそうで、他の除草剤では泡にならないそうですね。除草作業の効率化と労力軽減を図るためにも、また、てんさいの収量安定化のためにも、タッチダウンiQとパクパクはこれからも重宝してくれることでしょう。

サングリン太陽園の本瀬さんは、パクパクやタッチダウンiQをどのように評価されていますか。


本瀬さん:
タッチダウンiQをパクパクで処理する除草技術は、5年ほど前にだいずの難防除雑草対策として紹介させていただいてから一気に普及が進み、現在までに3000台ほど販売させていただきました。JAおとふけ管内の生産者への普及率は過半数を超え、十勝全体でも普及率は半数近くになっているのではないでしょうか。

十勝管内は広大なてんさい圃場を経営している生産者が多く、雑草防除における効率化や労力軽減は大きな課題だったので、今後はてんさいにおいてもタッチダウンiQをパクパクで処理する除草技術が広がっていくのではないでしょうか。また、スプレイヤーなどを使ったタッチダウンiQの通常の茎葉散布では、小麦など幅広い場面で使うことができますので、北海道農業の今後のさらなる貢献に期待しています。

【参考動画(大豆圃場におけるパクパクPK89の活用法と除草効果について)】


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