大型チョウ目害虫の防除対策で、注目の有効成分インドキサカルブとは!?

病害虫・雑草コラム

近年、葉菜類やねぎの生産現場では、各種殺虫剤への感受性低下などの要因を背景にハスモンヨトウやシロイチモジヨトウといった大型チョウ目害虫に対して効果的な薬剤が少なくなりつつあります。「インドキサカルブ」を有効成分とする「ファイントリムDF」は、大型チョウ目害虫に安定した効果を発揮する殺虫剤。その特徴、そしてハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウの防除のポイントについて、弊社技術普及センターの森本に話を伺いました。

昨今の大型チョウ目害虫の発生傾向について教えてください。


過去5年間における各地域の病害虫発生予察情報では、夏から秋にかけてハスモンヨトウとシロイチモジヨトウなどの大型チョウ目害虫の飛来・発生、被害が多発する注意報が多く発令されています。特にキャベツなどの葉菜類やねぎでの被害が顕著で、薬剤感受性の低下により効果的な薬剤が少なくなりつつあることが一つの要因と考えられているようです。

【シンジェンタジャパン株式会社 技術普及センター技術顧問 森本 輝一】

シンジェンタジャパン株式会社 技術普及センター技術顧問 森本 輝一


【ハスモンヨトウ幼虫(左)、シロイチモジヨトウ幼虫(右)】

ハスモンヨトウ幼虫(左)、シロイチモジヨトウ幼虫(右)


インドキサカルブを有効成分とするファイントリムDFは、どのような殺虫剤ですか。


殺虫剤ファイントリムDFの有効成分であるインドキサカルブは唯一IRAC※グループ22Aに分類され、独自の作用機構を有する殺虫成分です。特にチョウ目害虫に対して高い殺虫活性を示し、一部コウチュウ目にも活性を示します。
インドキサカルブは、害虫の神経系に作用し、チョウ目害虫の経皮や経口より取り込まれ、神経軸索中の電位依存性Na+(ナトリウム)イオンチャネルの正常な働きを阻害します。これにより、速やかに神経が麻痺状態となります。害虫が死亡するまで数日かかりますが、食害することができなくなるので作物への被害を最小限に抑えるのが大きな特徴です。
 ※IRAC=Insecticide Resistance Action Committee(殺虫剤抵抗性対策委員会)

【ファイントリムDFの効果発現の特徴】

ファイントリムDFの効果発現の特徴

 
ファイントリムDFは、チョウ目害虫に対してどのような特徴がありますか。


「チョウ目害虫の中齢・終齢幼虫にも高い効果」「速やかな食害抑制効果」「優れた残効性・耐雨性」といった特徴があります。シンジェンタでは改めてハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウの現地個体群を用いて「齢期別殺虫活性」「効果発現速度」「残効性」「耐雨性」といった基礎活性試験を実施し、その性能を確認しております。以下、それら試験結果をご紹介します。

特徴の「中齢・終齢幼虫にも高い効果」について詳しく教えてください。


大型チョウ目害虫は、1齢幼虫と終齢幼虫では身体の大きさがかなり異なるので、古くから農業現場で使用されてきた有効成分によっては、齢期の進んだ幼虫に対して感受性が低下するものもあります。ファイントリムDFでは、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウの齢期に関わらず高い効果を示しました。

【ハスモンヨトウの若齢幼虫:体長 3.5mm(左)、老齢幼虫:体長 40mm(右)  】

ハスモンヨトウの若齢幼虫:体長 3.5mm(左)、老齢幼虫:体長 40mm(右)

「速やかな食害抑制効果」についてはいかがでしょうか。


ファイントリムDFの食害抑制効果は、速効的に発現するため、収穫物へのダメージを最小限に抑えることができます。「害虫が死ぬまでに時間がかかるから、食害が進んでしまう」という誤解があるようですが、食害抑制効果の速さの認知が不十分なことが主な要因と考えられます。

下の試験では、放虫3時間後には、食害が停止しました。害虫が完全に死亡するには数日を要しますが、食害はすぐに止まるため被害度は低いのが分ります。

【ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウの4齢幼虫に対する効果発現速度】

ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウの4齢幼虫に対する効果発現速度

 遅効性が特徴の「IGR 系統」の殺虫剤とはどのように異なりますか。


ファイントリムDFとIGR系統の殺虫剤では、チョウ目害虫が死に至るまでの期間はほぼ同じです。IGR 系統の殺虫剤は、幼虫の脱皮を阻害して殺虫効果を示します。そのため、脱皮するまで食害は止まりません。一方、ファイントリムDFは3時間後には食害が停止しています。
害虫の殺虫効果はもちろんですが、作物への食害をいかに早く止めるかが重要なので、ファイントリムDFはチョウ目害虫防除の有効なメニューの一つといえます。

「優れた残効性・耐雨性」について教えてください。


ファイントリムDFに浸透移行性はありませんが、下の試験では2週間以上の安定した防除効果を示し、十分な残効性を有していることが分かりました。室内、野外試験ともに同様の結果であったことから、ファイントリムDFが紫外線に対して安定的であることを示し、このことが残効性にも寄与していると考えられます。
また、人口降雨装置を用いた試験では、3時間後の降雨でも安定した効果を示したことから、高い耐雨性を有していることが分かりました。そのため、散布後の急な天候変化に対する安心感もあります。

【ファイントリムDFの長い残効性】

ファイントリムDFの長い残効性

【ファイントリムDFの優れた耐雨性】

ファイントリムDFの優れた耐雨性

有効成分インドキサカルブは、以前から使用されていますが、殺虫剤抵抗性についてはいかがですか。


日本においては15年程前から使用されています。日本各地で採取したハスモンヨトウやシロイチモジヨトウに対するインドキサカルブの常用濃度(2000倍)検定では、過年度にわたって安定した効果を示しております。
今後もシンジェンタでは常用濃度検定を実施する予定です。定期的に各産地でモニタリングを行い、効果的なローテーションの提案に努めてまいります。

【インドキサカルブの有効性】

インドキサカルブの有効性

ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウに対する、ファイントリムDFの上手な使い方について教えてください。


作期を通じて系統の異なる薬剤でのローテーション防除が基本になりますが、まず効果的な薬剤により育苗期の防除を行い、初期防除を徹底すること。その後は、各県の病害虫発生予察情報や地域の防除暦に応じて、対象害虫に効果的な薬剤を選びましょう。

IRAC グループ22Aに分類される有効成分はインドキサカルブしかないため、系統の異なる薬剤でのローテーション防除をプログラムする上で使いやすい有効成分と言えます。IRACグループ22Bのメタフルミゾンとの交差抵抗性のリスクは低いと考えられていますが、原則的にこれらの有効成分の連続使用は避けるようにしてください。

キャベツの場合、葉が巻いてしまうとチョウ目害虫に薬剤がかかりにくくなりますし、ねぎの場合はシロイチモジヨトウが葉の中に潜り込んでしまうと防除が難しくなります。そこで、ファイントリムDF散布のタイミングとしては、その残効性を活かして、キャベツなどの葉菜類なら「結球始期」、ねぎなら「発生初発」に散布するようにしましょう。

こうしたポイントをしっかりとおさえ、10年後、20年後もファイントリムDFが皆様の圃場で活躍できるように、上手にご活用いただけると幸いです。

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